③初期の予知能力(予知夢)の研究(20世紀初頭)
未来を前もって知ることができる予知能力は、私たちに備わっているものなのでしょうか。研究家によれば、私たちにも未来を見る力があるそうです。それが、「予知夢」です。誰でも、「予知夢」を見たことがあるでしょう。「予知夢」は、「虫のしらせ」とも言います。
【ジョン・ウィリアム・ダン(J.W Dunne 1875~1949)の研究】
彼は、イギリスの兵士であり、現代の飛行機の基礎を作った航空技師でもありますが、哲学者でもあります。彼はいくつかの夢について予知夢を経験しました。1927年、彼の著書 An Experiment with Time(時間に関する実験) という本の中で調査結果を報告しました。
【夢と実験】
彼の最初の記録は、1898年です。彼の夢はいくつかの大きな災害の夢でした。
- ⑴マルティニーク火山の噴火
- ⑵パリでの工場火災
- ⑶スコットランドの鉄橋での鉄道脱線事故
彼は、それらの夢と新聞記事との検証を行いました。同様の実験を何人かの友人にも試してもらいました。その結果、予知は、過去の記録と同じように発生しているものだと証明することができました。但し、予知は事件が発生するまでは、予知かどうかの識別ができないという不便さがありました。
【ダンの時間に関する理論】
ダンの説明は、「今」と言う時間の中にいる人間は、科学的に「今」を捕らえることができないという論拠に立っています。「今」という時間は、すぐに「過去」になってしまいます。「未来」という時間も次々に、「今」という瞬間を通過して過去になっていきます。
「予知夢」がなぜ起きるかという問題に対して、ダンによると、目を覚ましている時は、現在を越えてものを見るということが妨げられますが、夢をみている時は、時間の中での制約が取り除かれ、未来を見ることができる予知能力を得ることができるというのです。
現代科学においては、物理的な時間は4次元の世界にありますが、彼の議論は、3次元においての時間の測定問題に限りない議論を引き起こしました。
④今世紀の予知能力(予知夢)の研究
2018年10月に出版された本に「The Premonition Code: The Science of Precognition, How Sensing the Future Can Change Your Life」があります。著者は、ノースウェスタン大学の神経科学者のジュリア・モスブリッジ博士と作家のテレサ・チャン氏の共著です。この本の中で、一般の人々でも未来を感じることが可能であることを示しています。
【人間の予知能力は、無意識下にある】
モスブリッジ博士はこれまで30年間の研究によって、次の事柄が分かったと言っています。
- ⑴私たちが無意識下の情報は未来に出来事に関係している。
- ⑵私たちの無意識は、すでに未来を予見している。
- ⑶私たちは未来を予見する能力がある。
【出来事の因果関係】
モスブリッジ博士は、
「人生の出来事は、ネックレスのビーズのようなものであり、予知とはネックレスをたどっていくことで、過去と未来をつないでいくようなものだ」
と言っています。博士の個人的な経験の中で、彼女の祖母が亡くなって数日後、夢に祖母が出てきました。そして祖母は彼女に言いました。
「あなた、知っている? 私はいつも文章を右から左に読んでいるのよ」
と言うのでした。博士は、祖母がいったい何を言っているのかわかりませんでした。それから数日後、博士は祖母の遺品を整理している時に、古い巻物が出てきました。巻物に書かれている字は、右から左に書かれているヘブライ語でした。博士の家族の先祖は、スコットランド系のアイルランド人です。なぜ祖母がヘブライ語の巻物を持っていたのか、わかりませんでしたが、その糸口が数年後の出来事に現れました。
【ユダヤ教との出会い】
偶然にノースウェスタン大学で、ユダヤ教の贖罪の日にユダヤ教のラビの説教の講演がありました。博士は、その説教を聞いて涙があふれるほど感銘を受けました。それをきっかけにして、博士はユダヤ教に改宗しました。
【DNA鑑定】
博士は、なぜユダヤ教に改宗するほど、自分がユダヤ教に惹かれてしまったか興味を持ちました。そして、自分のDNA鑑定をした遺伝子の中に、ユダヤ人のものを発見しました。祖母の夢が、未来の予知につながったことを確信したのです。
【ランダムに見せる映像の実験】
博士は、大学生の被験者を集めて実験をしました。被験者には、「普通の映像」と「怖い映像」とを見せました。被験者は、普通の映像を見せても何の反応もありませんでしたが、怖い映像を見せたときには無意識レベルで脳波に反応が出ました。この普通の映像と怖い映像をランダムに被験者に見せましたが、そのうち不思議な現象が起きました。
【10秒前に反応が起きている被験者】
完全にランダムに見せている映像のはずですが、被験者は怖い映像が流れる10秒ほど前から「怖い映像を見た時の反応」を始めたのです。これは何を意味するのかと言うと、被験者は無意識的に「10秒前から怖い映像が流れることを知っていた」ということになります。
⑤潜在意識に導かれる予知能力(易占い)
中国4千年の歴史が造り上げた易占いは、複雑な運命の流れの中で人間がどの位置にあるのか、運勢を64の事象に分けて指し示すものとして昔から人々の生活に密着してきました。
「当たるも八卦当たらぬも八卦」と言いますが、当たる確率が多いのは、私たちの「潜在意識」から導かれる「予知能力」と結びついているからでしょう。
【ジョセフ・マーフィ博士と易】
ジョセフ・マーフィ博士(1898~1981)は、アイルランド出身の著述家であり牧師です。しかし、教会で聖書の解説をするという活動ではなく、主に「潜在意識の効用や利用法」について、講演をしたり、個別に相談に乗ったりして、人々の問題を解決しました。彼の著書は、日本でも翻訳され広く読まれています。その中で、易に関する著書があります。
「Secret of I Ching」直訳では「易の秘密」となりますが、翻訳されたものは、「マーフィー博士の易占い 運命が不思議なほどわかる本」(翻訳者:しまず・こういち 王様文庫)です。潜在意識との関りの部分をご紹介致します。
【運・不運はあなたの「潜在意識」が決めている】
マーフィー博士は、
「易は特定の指図は与えない。それはあなたについて語るだけである。それを知って解釈することによって、あなたは次に打つ手を決定するのである」
と言っています。例えば、ある人がラスベガスに毎年のように行っていましたが、今回は気が進みませんでした。そこで、易をたててみると、災難を表わす卦が出ました。彼は旅行を取りやめました。結果は、予定していた飛行機が墜落してしまったのです。易占いは、潜在意識の中から未来を見せる「予知能力」なのです。
【潜在意識でなぜ予知ができるのか】
マーフィー博士は、ユング博士(1875~1961)の研究した「意味ある偶然の一致」(シンクロニシティ)は、現実に起きると言っています。人間の無意識は真相にある「集合的無意識」につながっており、そこから「予知能力」がもたらされると言っています。この集合的無意識には、古代から受け継がれた人間の叡智や、全ての人々との無意識の集合体です。人の死や事故などの「虫のしらせ」も無意識の世界からの情報と考えられています。
【カール・ユングの予知夢】
ユング博士の研究のきっかけとなったのは、自己の夢の経験からです。彼の見た夢は「予知夢」と信じられるほど強烈だったのです。彼の見た夢というのは恐ろしいものでした。
その夢の内容は、ある晩、彼は暗くじめじめしたジャングルのような森の中を歩いていました。突然、彼は大きな鋭い笛の音を聞きました。それは恐ろしい死神と言われるハンターが吹いた笛の音でした。すると、恐ろしく大きな猟犬が何匹も襲ってきました。その瞬間、彼は、死神と言われるハンターが人間の魂を取りに来たことを確信しました。
実際、次の朝、彼の母親の死を知らされました。ユング博士は、この恐ろしい夢が単なる偶然の一致ではなく、必要とされる情報が、潜在意識の中から「予知夢」として象徴的な形でもたらされることを知りました。
続いて、聖書「エゼキエル書」に書かれた予言についてお話しいたします。