「九字切り」について知りたい方へ。
漫画やアニメで、忍者や陰陽師などが印を結んで「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」と唱えるのを見たことがある人は多いのではないでしょうか。これは一般的に「九字切り」もしくは「早九字」と呼ばれています。
本記事では、九字切りとは何か?分かりやすく簡単に解説いたします。
九字切りとは
印を結ぶか、空中に指で線を描きながら「臨(りん)・兵(びょう)・闘(とう)・者(しゃ)・皆(かい)・陣(ちん)・列(れつ)・在(ざい)・前(ぜん)」、もしくは、「臨(りん)・兵(びょう)・闘(とう)・者(しゃ)・皆(かい)・陣(ちん)・列(れつ)・前(ぜん)・行(ぎょう)」と唱えます。
戦勝や防災、魔除けの効果がある
九文字の漢字からなる言葉を唱えるため、「九字切り」もしくは「九字護身法(くじごしんほう)」、「早九字(はやくじ)」などと呼ばれます。戦勝祈願や防災、魔除けの効果があるといわれています。
九字切りの成り立ち
九字切りの起源については諸説あります。
中国道教の六甲秘呪が起源という説
漫画や映画、アニメや小説などでは、陰陽師が九字切りをすることが多いのですが、中国道教の六甲秘呪という作法と、日本に古くから伝わる修験道が交じり合って完成したとされる説があるようです。ちなみに、道教では「九字」ではなく、「縦横法」と呼ばれていました。
神や仙人になるための修行の一環
元々、中国で道教の道士たちが神や仙人になるための修行の一環として唱えていた、という説もあります。
誤解された形で広まった
まず、日本における密教の経典『大日経』の実践法である『胎蔵界法』に記されている『成身辟除結界護身法』が、誤解された形で民間に広がったものである、という説です。修験道の広まりと共に、武士や忍者が護身の呪文や厄除け、精神集中のために使うようになったとされています。
九字の意味は「闘う意志のある者が自分の前にいる」
現代の人に分かりやすいように訳すと、「強い者や闘志のある者が、(目には見えないが)自分の前にいる」といった意味でしょう。
強力な威力がある九字
もう一つの九字、「臨兵闘者皆陣列前行」の方は、最後の2つの文字が異なっているのですが「臨む兵、闘う者、皆、陣をはり列をつくって、前を行く」という意味です。こちらの九字は、最強の威力を持つという説もありますので、唱える際はくれぐれも気を付けましょう。
九字切りには様々な効果がある
九字切りには、様々な効果があります。
集中力がアップする
かつて、忍者や武士が使っていた術ですので、集中力アップの効果が期待できます。現代でも、トップアスリートは自分の集中力を高めるルーチンを持っているもの。九字護身法を、集中力アップの方法として使ってみるのはいかがでしょうか。
不吉な場所や空間を浄化できる
特定の場所に近付いた瞬間、嫌な気配を感じることがあります。毎日通う職場や学校の場合、「嫌な場所に近付かない」という方法を取ることもできません。その場合、九字護身法を使うと、嫌な気配を断ち切ることができます。
悪縁や腐れ縁を断ち切る
九字護身法には、なかなか縁が切れない悪縁や腐れ縁を断ち切るという効果もあります。誰にも気づかれずに縁を切りたい場合、試してみてはいかがでしょうか。
悪霊を祓う
原因不明の体調不良や不運が身の回りで起きている場合、霊的なエネルギーが悪さをしているのかもしれません。その場合、九字護身法で悪霊を祓うことができます。
切紙護身法の手順
『切紙護身法』とは、神仏を表す印(いん)を結びながら、九字を唱える方法のことです。『切紙』とは、奥義や口伝が記されている紙のことで、剣術や古典芸能などの分野で一定の実力を備えた者に授けられるものです。
①「臨」
「臨」と唱えながら、普賢三摩耶印(ふげんさんまやいん)を結びます。左右の手を組んだ後、人差し指同士を立てて合わせる形です。この印は、天照大御神、もしくは毘沙門天を表しています。
②「兵」
「兵」と唱えながら、大金剛輪印(だいこんごうりんいん)を結びます。左右の手を組み、人差し指を立てた状態のまま、中指を人差し指にからめる形です。この印は、十一面観音、もしくは、八幡神を表しています。
③「闘」
「闘」と唱えながら、外獅子印(げじしいん)を結びます。左右の中指と人差し指をからませた状態で、左右の薬指の腹、小指の腹をそれぞれ合わせます。この印は、如意輪観音、もしくは、春日大明神を表しています。
④「者」
「者」と唱えながら、内獅子印(ないじしいん)を結びます。左右の手の中指と薬指をからませて、左右の手の人差し指同士を合わせます。この印は、不動明王、もしくは加茂大明神を表しています。
⑤「皆」
「皆」と唱えながら、外縛印(げばくいん)を結びます。左右の手のひらを合わせ、右手の親指が外側になるように、指を組み合わせます。この印は、愛染明王、もしくは、稲荷大明神を表します。
⑥「陣」
「陣」と唱えながら、内縛印(ないばくいん)を結びます。外縛印と似た形ですが、全部の指先が手の中に隠れるように印を結びます。左手の親指が内に隠れるようにしましょう。この印は、聖観音、あるいは住吉大明神を表します。
⑦「列」
「列」と唱えながら、智拳印(ちけんいん)を結びます。左手の人差し指のみを立て、残りの指は握った状態にします。そして、右手で左手の人差し指を握ります。右手の親指は手の中に隠します。この印は、阿弥陀如来、もしくは、丹生大明神を表現しています。
⑧「在」
「在」と唱えながら、日輪印(にちりんいん)を結びます。左右の手を開いた状態にして、左右の親指道士、人差し指同士をくっつけます。この印は、弥勒菩薩、もしくは日天子を表しています。
「前」と唱えながら、隠形印(おんぎょういん)を結びます。左手を握って握りこぶしを作り、右の手のひらで下から支えるようにします。この印は、文殊菩薩、あるいは摩利支天を表しています。
早九字護身法の手順
「切紙護身法」よりも簡単で、手順を覚えやすい、「早九字護身法」を紹介していきましょう。武士や忍者が精神統一に使っていたのは、こちらだといわれています。
①刀印を結ぶ
まず、右手の人差し指と中指のみを立てて、人差し指と中指をくっつけた状態にします。「しっぺ」をする時の指の形、もしくは、ジャンケンで「チョキ」を出す時の二本の指をくっつけた状態にする、というとわかりやすいでしょうか。そして親指で、薬指と小指の爪を隠すようにします。この指の形を「刀印」と呼びます。
②刀印を鞘に納める
左手も、①の右手と同じように刀印を結びます。そして、親指・薬指・小指で輪を作り、右手の人差し指と中指の部分を、左手で作った輪に差し込みます。ちょうど、刀を鞘に納めるような形です。
③不動明王の真言を唱える
刀印を左手の鞘に納めたまま、「ノウマクサンマンダ・バザラダンセンダ・マカロシャダ・ソワタヤ・ウン・タラタ カン・マン」と、不動明王の真言を三回唱えます。
④右手の刀印を左手の鞘から引き抜く
右手の刀印を左手の鞘から引き抜きます。左手は印を結んだまま、腰に当てた状態にします。まだ、右手の刀印は崩さないで下さい。
⑤九字切
- 「臨」と唱えながら、右手の刀印で、空間を横に切り裂きます。この時、悪霊や邪気などを払う気持ちで行って下さい。お祓いをしたい空間や方角に向かって行うと、効果的です。
- 「兵」と唱えながら、右手の刀印で、空間を縦に切り裂きます。
- 「闘」と唱えながら、右手の刀印で、空間を横に切り裂きます。
- 「者」と唱えながら、右手の刀印で、空間を縦に切り裂きます。
- 「皆」と唱えながら、右手の刀印で、空間を横に切り裂きます。
- 「陣」と唱えながら、右手の刀印で、空間を縦に切り裂きます。
- 「列」と唱えながら、右手の刀印で、空間を横に切り裂きます。
- 「在」と唱えながら、右手の刀印で、空間を縦に切り裂きます。
- 「前」と唱えながら、右手の刀印で、空間を横に切り裂きます。
九字を切り終えたら、再び、右手の刀印を左手の鞘に納めて下さい。
最後に
九字切り、九字護身法について、少しでも理解を深める手助けになれば、幸いです。ちょっとした時に印を結んで、「臨兵闘者皆陣列在前…」と唱えるのは格好いいし、気持ちが引き締まりますよね。
ですがもし、九字切りを行って、体調が悪くなったり運気が悪化した場合は、すぐに取りやめるようにして下さい。特に、霊感体質の方の場合、悪い影響が出ないとは限りません。
以上、最後までご覧いただき有難うございます。