悪魔憑きの実例
①メリーランド悪魔憑き事件
ホラー映画の名作「エクソシスト」は、実際に起きた事件がモチーフになっているといわれています。1949年にアメリカで起きた「メリーランド悪魔憑き事件」と呼ばれる事件です。
水が滴るような音が聞こえた
当時13才の少年ロビーは、叔母に教わったウィジャ・ボード(西洋版のコックリさんのような遊び)で遊んでいました。その後、水が滴るような音や、何かを叩くような音、キーキーと物を引っかくような音が聞こえるようになったといいます。
叔母が急死
それから数日後、ロビーにウィジャ・ボードを教えてくれた叔母が、急死したといいます。
ポルターガイスト現象が起きる
叔母の死の影響もあってか、ロビーの性格が豹変し、周囲の物が勝手に動いたり、家具が揺れたりするポルターガイスト現象が起きるようになりました。
悪魔祓いを経て平穏な日々に
心配した家族は有名な牧師に、悪魔祓いを依頼しました。その後、二ヵ月以上、計三十回の悪魔祓いの儀式を経て、ロビーとその家族は平穏を取り戻したといいます。
精神疾患の可能性も
現代の精神医学の観点では、少年ロビーは精神疾患を患っていたのではないか、という見方が主流のようです。特定の精神病に罹患すると、幻覚や妄想、痙攣などの症状が出るためです。
②ルーダンの悪魔憑き事件
1630年のフランス中西部、ルーダンという村で悪魔憑きの事件が起きたといいます。17人の修道女が暮らしていた修道院で、シスターたちが突然、暴言を吐いたり、階段を突然駆け上がったり、ミサを妨害するような行為を始めました。
神父が告発された
修道院の噂はフランス中に広まり、「修道院のグランディエ神父が、シスターたちに悪魔を憑依させた」と告発されました。神父は逮捕され、異端審問にかけられ、全身の毛を剃られて、悪魔の印がないかを探し出され、拷問にかけられたといいます。
神父は火あぶりに処された
一ヵ月に及ぶ審議の末、グランディエ神父は悪魔と契約していたとみなされ、火あぶりによる死刑を宣告されました。グランディエ神父は、死後に火あぶりにしてほしいと嘆願しましたが、受け入れられず、生きたまま火にかけられることになりました。
濡れ衣という説も
実はこの事件は、グランディエ神父を妬んだ聖職者たちによる濡れ衣だったという説があります。神父の死後、彼を陥れた関係者たちは、次々と不幸に見舞われたといいます。
③アンネリーゼ・ミシェル事件
1970年代、ドイツで起きた事件です。アンネリーゼ・ミシェルという若い女性は、精神病の発作に悩まされていました。病院に入院し、治療をしていましたが、病状はなかなか回復しませんでした。
悪魔に取り憑かれていると考えるように
元々、敬虔なカトリックの信徒だったアンネリーゼは、自分は悪魔に取り憑かれていると考えるようになりました。そのためか、十字架や教会、聖なる泉などに対する拒否反応が出るようになりました。
悪魔祓いを依頼
症状はどんどん悪化し、アンネリーゼは自分の尿を飲んだり、昆虫を食べるようになりました。事態を重く見た両親は、悪魔祓いの儀式を行うよう教会に依頼しました。その後、約十ヵ月間にも及ぶ儀式が行われました。
アンネリーゼが死亡
そして1976年7月、アンネリーゼは死亡しました。死因は極度の飢餓による栄養失調と脱水症状です。アンネリーゼは死の間際、一切の食事を受け付けなかったそうです。悪魔祓いの儀式に関わっていた司祭二人は、過失致死傷罪で逮捕されました。
本当に悪魔憑きだったのかは謎
果たしてアンネリーゼは、本当に悪魔憑きだったのでしょうか。彼女は死の間際、「今日の我侭な若者たちや、現代の背徳的な司教たちのため、死んで償う」といった発言をしていたそうです。敬虔なカトリック信徒であった彼女が、なかなか治らない精神病に苦しんだ挙句、殉教者として命を落とすことを望んだ可能性は、ゼロではないかもしれません。
最後に
かつて「悪魔憑き」とされていたものの多くは、現代の精神医学の観点に照らし合わせてみると、精神病の一種だといわれることが少なくないといいます。また、キリスト教において悪魔憑きは、精神修行の一環と解釈されることもあるようです。
もしかすると「悪魔憑き」の時に取り憑く悪魔というのは、誰の中にもある弱い心を具象化したものなのかもしれません。
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